of birth

魔剣烈剣

(1955)
■ 時代劇 中編
(全256ページ)
■ 浪人・山本龍馬はある日、自分に斬りかかってきた夕日照之助という少年を弟子にすることになった。照之助は、剣の稽古に必死で励みながら、越中富山之守)の下屋敷の前で、夜な夜な笛を吹いた。追い払おうとする家臣が笛吹きに敵わないのを知った富山之守は、用心棒を募集した。友人の村雨次郎からそれを聞いた龍馬は、村雨と共に富山之守の用心棒となる。その日、にわかに嵐となった。それは富山之守が持つ黒龍という剣のせいだった。黒龍は嵐を呼ぶ剣だったのだ。その最中、笛吹きが現れる。それが照之助であることを龍馬は初めて知った。龍馬は顔を隠し、照之助を逃がそうとするが、近くのお堂まで逃げたとき、村雨が追ってきた。わけは話せぬという照之助を前に、二人の友は斬り合いになりそうになる。それを見た照之助はようやく経緯を話し始める。 16年前、刀工の白雪は富山之守から刀作りを命じられ、二振りの刀を鍛えた。黒龍は嵐を呼び、白龍はその嵐を押さえた。白雪はその不思議な刀のうち、黒龍を献上したが、富山之守に斬られてしまう。富山之守は黒龍の素晴らしさを見て、他の者が同じような刀を持つのを恐れたのだ。白雪の死後、妻は一人の女の子を産んだ。早百合と名付けられた娘は16年の後、亡くなった母を弔い、形見の白龍を背負って江戸へ出た。父の敵を討つために。そしてその早百合こそが、男装した夕日照之助だったのだ…… 忍者などの描き方など、後の「伊賀の影丸」などにも強く影響を与えたと思われる作品。 同年に、同じ設定の短編『月笛星笛』が描かれている。
■ 巻末に「最後の山嵐」の予告カット掲載
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