of birth

音無しの剣

(1955)
■ 時代劇 中編
(全128ページ)
■  横山光輝の公式デビュー作品。

 剣術家の少年、高柳又四郎は、剣の道を開くために行った願掛けの満願の日、帰り道に辻斬りに襲われる。だがとっさに放った剣は「後から出でて先に切る」、それが一撃必殺、音無の剣開眼の瞬間だった。
 道場で稽古を続ける又四郎に、噂を聞いた旅の武士、村雨次郎が路上で試合を挑んできた。それを受けた又四郎は村雨に打ち勝ち、村雨は3年後の再試合を言い残して去った。そんな中、音無の剣は周囲から「魔剣」と噂され、又四郎は悩んだ。
 ある日、先輩の寺田が何者かに闇討ちに遭って怪我をした。犯人は寺田から仕官推薦を断られた市川兄弟だった。闇討ちが露見したと思った二人は、夜中に寺田邸をを襲ったが、そこには又四郎が詰めていた。名にし負う剣客の市川兄弟と立ち合った又四郎は、2対1で構えたまま動くことができないでいた。剣豪同士の膠着状態を見て、寺田が矢を放った。それを合図にしたように、又四郎の剣が市川の兄伝二郎を斬った。弟、兵斉は逃げ、又四郎はその場に気絶した。
 その後、市川兵斉の元に鹿島の老人と名乗る男がやってきた。老人は市川兄弟の師であり、世に知られた剣の達人だった。兄の伝次郎が又四郎に闇討ちされたと聞いた鹿島の老人は、又四郎を待ち受け、勝負を仕掛けてきた……

 この作品はデビュー作であると同時に、横山光輝の時代劇長編の第一作でもある。これまでの投稿作品などは、西部劇やSF、ミステリ系が多かったが、プロとしての第一作は、時代劇だった。
ebookjapan
S001