of birth

座っていた男

(1970)
■ 時代劇 ホラー・伝奇 短編 青年誌
(全32ページ)
■ 天真一刀流道場は、すでに当主を亡くし、しかし繁盛をしていた。師範代の腕も良く、何より娘の雪江が美しかったからだった。その雪江を取り巻く門弟の一人、源四郎はなぜか母のしのぶに気に入られていた。しばらくの間、具合が悪いと引きこもっていたしのぶだったが、当時に行きたいという理由で、源四郎をはじめとする数名の門弟を連れて、娘雪江とともに温泉場へ向かった。しかししのぶの病気は進行しているようだった。ある日、源四郎は自分たち以外に部屋の奥に黙って座る武士の姿を見た。しかしその姿は、しのぶと源四郎にしか見えていなかった。これまでしのぶだけにしか見えていなかった者が、源四郎にも見えたのだった。そしてそれは二十年前のしのぶの恋人の亡霊だったのだ。以前にも雪江の縁談の時に現れた男によって、縁談の相手は恐ろしがって逃げてしまったという。源四郎は雪江に求婚し、やがてしのぶが倒れた。しのぶの枕辺には、いつでも男の姿があった。そして・・・ 
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